重力ピエロ 伊坂幸太郎 新潮文庫

重力ピエロ 伊坂幸太郎 新潮文庫


□マイブックミシュラン(星最大5つ)

読みやすい ☆☆☆
心にひびく ☆☆☆☆☆
発見がある ☆☆
ビジネス書 ☆
人生ヒント ☆☆☆






□しおり

「人生といくのは川みたいなものだから、何をやってようと流されていくんだ」「安定とか不安定なんていうのは、大きな川の流れの中では些細なことなんだ。向かっていく方向に大差がないのなら、好きにすればいい」[P.71]

「本当に深刻なことは、陽気に伝えるべきなんだよ」春は、誰に言うわけでもなさそうで、噛み締めるように言った。「重いものを背負いながら、タップを踏むように」それは詩のようにも聞こえ、「ピエロが空中ブランコから飛ぶ時、みんな重力のことを忘れているんだ」と続ける彼の言葉はさらに、印象てきだった。[P.106]

まっすぐに行こうと思えば思うほど、道を逸れるものだからね。生きていくのと一緒だよ。ますぐに生きていこうと思えば、どこかで折れてしまう。かと言って、曲がれ曲がれ、と思ってると本当に曲がる[P.116]

「人生は一箱のマッチに似ている。重大に扱うのは莫迦々々しい。重大に扱わなければ危険である」[P.206]

人の外見も一緒でさ、人は目に見えるもので簡単に騙される。一番大事なものは目に見えない、という基本を忘れているんだ[P.254]

気軽に、「さようなら」が言えるのは、別れのつらさを知らない者の特権だ、と私は思う。[P.380]






□ブログ管理者評

主人公の”私”と弟を中心に話しが展開されていく。惜しむらくは、冒頭に使われた一文を、物語の最後にも使っていた点だ。ダイヤの指輪に「これはダイヤモンドです」と書かれているようで、興ざめてしまったのである。しかしながら、作品全体としては、随所に弟が放つ名言・格言が心を打つ。もちろんフィクションなので弟の発言は作者が言わせたことだから、作者の深い教養が感じられる。何しろこの本を手に取った理由が、どこかの書評で読んだ「本当に深刻なことは、陽気に伝えるべきなんだよ」という文章が心を動かしたからだった。投稿者しおりにいつもより多くのリストが並べられたことでもわかる。






□内容紹介

兄は泉水、二つ下の弟は春、優しい父、美しい母。家族には、過去に辛い出来事があった。その記憶を抱えて兄弟が大人になった頃、事件は始まる。連続放火と、火事を予見するような謎のグラフィティアートの出現。そしてそのグラフィティアートと遺伝子のルールの奇妙なリンク。謎解きに乗り出した兄が遂に直面する圧倒的な真実とは──。溢れくる未知の感動、小説の奇跡が今ここに。


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□作者プロフィール

伊坂幸太郎(イサカコウタロウ)
1971(昭和46)年千葉県生れ。'95(平成7)年東北大学法学部卒業。2000年『オーデュボンの祈り』で新潮ミステリー倶楽部賞を受賞し、デビュ。'02年刊行の『ラッシュライフ』が各紙誌で絶賛され、好評を博す。'03年に発表した『重力ピエロ』は、ミステリファン以外の読者からも喝采をもって迎えられ、一気に読者層を広げた。また『重力ピエロ』で、七〇年代生れとしては、初の直木賞の候補となる。'04年『チルドレン』、'05年『グラスホッパー』、'06年『死神の精度』が直木賞候補に。'04年『アヒルと鴨のコインロッカー』で吉川英治文学新人賞受賞。洒脱なユーモアと緻密な構成で読む者を唸らせ、近年稀にみる資質の持ち主として注目を浴びている。





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