菜の花の沖(一)~(六) 司馬遼太郎 文春文庫

公開日: 2015年10月11日日曜日 出版社_文春文庫 著者_司馬遼太郎

菜の花の沖(一)~(六) 司馬遼太郎 文春文庫



□マイブックミシュラン(星最大5つ)

読みやすい ☆☆☆
心にひびく ☆☆☆☆
発見がある ☆☆☆☆
ビジネス書 ☆☆☆☆
人生ヒント ☆☆☆






□しおり

・(この若衆頭だけは、わしに悪意をもっていない)嘉兵衛は、おもった。人間の感受性のなかで、相手が自分に愛情をもってくれているかどうかということほど、敏感なものはないかもしれない。[一・P184]

・「人として天下に益することを考えずに、為すことなしに一生をすごすのは禽獣よりも劣る」という松右衛門のことばはまことに激しい思想で、この理屈を一歩押しすすめれば俸禄階級の武士のほとんどが禽獣より劣るということになる。[二・P52]

・北風荘右衛門としては、この一件で、和泉屋にわたした十両と浜屋へ送った五十両とあわせて六十両の損になる。しかしふだん、かれが商人の値うちは金の使い方にあるといっていることからみても、これはかれの哲学上の行為だったかと思える。[二・P204]

・自分の命が失われるかもしれないという恐怖が基礎になってかれらは検分している。そこへ嘉兵衛が加われば、みなが嘉兵衛の目や能力に頼ってしまい、検分への緊張を薄らがせてしまう。ぐあいのわるいことに、かれらは、嘉兵衛をすぐれた船乗りだと思っている。このため、自分が見たり感じたりしたことを正直に言わなくなるおそれもあた。「だから、みなにまかせているのです」[二・P205]

・サトニラさんは、一種の哲学者であった。商人というのは利を追うものでありながら、我欲ではそれができない、我欲のつよい人間はすでにそのために盲目になっている、耳も欲で聾(ろう)している、だから利という海で泳ぎながら自分自身の利についてにぶい人間でなければならない、といったことがある。[三・P19]

・「しかし大人というものは仕様のないもので、子供がもっていr疑問を持たなくなる。天地人のさまざまな現象について、なぜそうであるのかという疑問を忘れたところから大人が出来上がっている。北夷先生が、高い童心を持て、とつねにおおせられるのはそのことだ。嘉兵衛さんを見ていると、北夷先生が船頭になられた姿のように思われるな」[三・P190]

・商業は、基本的にはその品物が欠乏してこまっている地域にそれを運んで渇きを癒す行為である。それに伴う倫理として商品は良質でなければならず、量目は正確でなければならず、値は公正でなければならない。逆である場合、やがては商人そのものに仕返しとしてはね返ってくる。[三・P209]

・クルーゼンシュテルンは、「独立と裕福」ということだ、とすぐれた理由をひきだしている。暮らしは原始的採集生活であるとはいえ、独立して何人にも支配されず、どの勢力からも人間としてのわるい格付けをされていないからであろう。巨大な商品経済は、国家の形と力をもって、無垢な自然生活者たちをその土地ぐるみ投網でからめとり、かれらの生産を商品交換に引き入れ、人間も暮らしも、商品生産の労働者としてしか評価しなくなる。[五・P279]

・浄瑠璃は室町中期にはじまって、やがて音曲(おんぎょく)として三味線が加わり、さらに人形で演じられるようになった。江戸期は、町人の文化としては、その初頭から濃厚に浄瑠璃の時代といっていい。浄瑠璃における詩的文章と語りと会話をないまぜた文学的言語の普及が、町人たちの日常語を豊富にしたし、洗練もさせた。[六・P90]

・かれのことばは、はるかなのちの二十世紀にある歴史時間のなかでの日本を予言的に批評しているようでもあり、どの国にもいる病的愛国主義者こそ国をそこなうということを語っているようでもある。[六・P161]








□ブログ管理者評

途中の(四)(五)巻あたりでは、嘉兵衛のことよりもロシア事情を多く述べる箇所が多くて、読むのがときに億劫になった。しかし逆に言えば(一)巻からそれまでは充分以上に楽しめて、かつ商業についての見識も深めさせてもらえた。

といって、(四)(五)巻は読む価値がないかといえば全くの誤解である。そこがなければロシアと日本の事情、ひいては世界事情が読者に分からないために物語の厚みが劇的に薄いものになってしまうだろう。

嘉兵衛はロシア人と1年ほど生活を共にすることになるが、人間というものは人種や言語を超えて、各人の人格をもって信頼関係を築くことができるということを、司馬遼太郎氏のたくさんの人間への愛とともに胸の奥に滲み入ってくるのである。






□内容紹介

江戸後期、淡路島の貧家に生れた高田屋嘉兵衛は、悲惨な境遇から海の男として身を起し、ついには北辺の蝦夷・千島の海で活躍する偉大な商人に成長してゆく……。沸騰する商品経済を内包しつつも頑なに国をとざし続ける日本と、難化する大国ロシアとのはざまで数奇な運命を生き抜いた快男児の生涯を雄大な構想で描く、全六冊。


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□作者プロフィール

司馬遼太郎(シバリョウタロウ)
大正12(1923)年、大阪市に生れる。大阪外語学校蒙古語科卒業。昭和35年、『梟の城』で第42回直木賞受賞。41年、『竜馬がゆく』『国盗り物語』で菊池寛賞受賞。47年、『世に棲む日日』を中心にした作家活動で吉川英治文学賞受賞。56年、日本芸術院会員。57年、『ひとびとの跫音』で読売文学賞受賞。58年、『歴史小説の革新』についての功績で朝日賞受賞。59年、『街道をゆく"南蛮のみちI"』で日本文学大賞受賞。62年、『ロシアについて』で読売文学賞受賞。63年、『韃靼疾風録』で大佛次郎賞受賞。平成3年、文化功労者。平成5年、文化勲章受賞。著書に『司馬遼太郎全集』『司馬遼太郎対話集』(文藝春秋)ほか多数がある。平成8(1996)年没。






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