俘虜記 大岡昇平 新潮文庫

俘虜記 大岡昇平 新潮文庫


□マイブックミシュラン(星最大5つ)

読みやすい ☆☆
心にひびく ☆☆☆
発見がある ☆☆
ビジネス書 ☆
人生ヒント ☆☆☆☆☆







□しおり

俘虜の生活では、日附なぞ正確に憶えていられるものではないが、この十日間だけははっきりしている。昭和二十年八月六日であった。夜大隊書記の中川が中隊本部に入って来て、その日広島へ新式爆弾が透過されたことを告げた。「えらい力やそうやで。一発で十哩(マイル)四方一ぺんやそうや」と彼はいった。・・・(中略)・・・彼がなお同じことを繰り返すので、私はいってやった。「中川さん、いい加減にしたらどうだ。日本がやられるのが、そんなにうれしいのか」[P304]







□ブログ管理者評

大岡昇平の本書を読むことができるのは、遡ればミンドロ島での戦中、ひとつだけ持っていた手榴弾が不発で自殺できなかったことが分岐点ではないか。

いや、しかしながらそれは幾つもの分岐点のひとつにすぎない。

戦争は弾薬の数だけ個々の人間の分岐点を否応なくつくってしまう。しかもそれはミンドロ島のジャングルのように湿っぽく薄暗い陰を落としている。







□内容紹介

著者の太平洋戦争従軍体験に基づく連作小説。冒頭の「捉まるまで」の、なぜ自分は米兵を殺さなかったかという感情の、異常に平静かつ精密な分析と、続編の俘虜収容所を戦後における日本社会の縮図とみた文明批評からなる。乾いた明晰さをもつ文体を用い、孤独という真空状態における人間のエゴティスムを凝視した点で、いわゆる戦争小説とは根本的に異なる作品である。

⇒アマゾンでこの本のことをもっと知る

↓ここに画像が出ていれば、アマゾンで購入できます!






□作者プロフィール

大岡昇平(オオオカ・ショウヘイ)
東京生れ。京都帝大仏文科卒。帝国酸素、川崎重工業などに勤務。1944(昭和19)年、召集されてフィリピンのミンドロ島に赴くが、翌年米軍の俘虜となり、レイテ島収容所に送られる。1949年、戦場の経験を書いた『俘虜記』で第1回横光利一賞を受け、これが文学的出発となる。小説家としての活動は多岐にわたり、代表作に『武蔵野夫人』『野火』(読売文学賞)『花影』『レイテ戦記』(毎日芸術大賞)などがある。







0 件のコメント :

コメントを投稿